パン屋の3年間で得たこと|こだわりのないブログ

パン屋の3年間で得たこと

2022年07月07日

サラリーマン時代

社会人になって32年間、人並みに給料をいただき安定したサラリーマン生活を送っていた。

50歳になり、それなりのポジションと仕事をこなし、仕事に自信もあった。

一度きりの人生だから、何かに挑戦したと常に思っていたところ、妻がパン屋を始めたいとのこと。

妻は主婦ではあったが、料理が好きで、プロ並みに美味しい。

パンは、ほぼ自己流ではあるが自宅で20年以上焼いていた。

パン屋を経験したことはないが、成功させる自信はある。

面白そうだ。

早期退職してパン屋になることにした。

パン屋を開店

妻が主体になって開店準備を始めた。

設備と店舗を決めて、女性が起業すると銀行が金利を優遇してくれるので、事業計画を作成してお金を「日本政策銀行」から融資してもらった。

お店は、資金を節約するために電気水道以外はDIYで改装した。

パン屋は、駅前にある商店街にあり立地的にはよい。

しかし、空き店舗が多く、人通りは通勤の朝晩だけで日中は高齢者が多い。

開店

開店して1日目、完売!

その後、売上は右肩下がりに・・・

開店後1年間

よくあるパターンにはまってしました。

「天然酵母と国産小麦の手作りパン」というキャッチコピーのとおり、手間と材料費が馬鹿にならず、おのずと価格も高めになる。

パン屋の町内では、「高いパン屋」という印象を持たれることになった。

店内

来客数は、1日で10人程度。

経費を差し引くと生活ぎりぎりの収入。

自信が崩れ落ちる。

我慢するかあきらめて撤退すべきか悩むところだ。

しばらくすると、味を理解してリピーターとなったお客様が少しづつ来店してくれるようになった。

お客様とお話しながらお会計をすると励ましてくれる。

雑談にも花が咲く。

お客様とコミュニケーションが取れてきた。

嬉しい。

ありがたい。

開店2年目

リピータ客が増えて、お店の定番商品も決まってきた。

人気のある商品を中心に家庭菜園で収穫した野菜を利用した季節のパンを毎月販売するようになった。

野菜のパン

劇的に来客数が増えることはなかったが、1日の来客数のばらつきが少なくなり、予測できるようになってきた。

さらに、近くのショッピングセンターが改装することになり、そこに出店する会社から委託販売でパンを出品しないかとのお誘いがあった。

ここに出品してパンが売れると委託手数料が発生する。

利益が少なくなるが、宣伝効果を見込んで参加することになった。

委託販売

新型コロナの影響でショッピングセンターの開店が1か月遅くなった。

お店の認知度が高まったのか、コロナの影響なのか原因は分からないが、来客数が少しずつ増加してきた。

委託販売

そして、委託販売が始まり、事実上2店舗販売のようになった。

売上は、期待通り数字になって表れた。

手づくりパンなので、1日に作れるパンの数には限界がある。

人を雇い生産量を増やして売上を伸ばすことも考えたが、中途半端では利益を減らすことにもなりかねない。

お店の規模が小さいのでこのままで様子見することにした。

天気で左右される路面店

夏や雨の日は、極端に来客数が激減する。

いろいろと対策をとることもありと思うが、経験的に大きな効果は期待できない。

夏は、思い切って半月くらい休業した。

台風や大雨の予報では臨時休業する。

雨の商店街

パン生地の発酵は、2日かかる。

2日後の天気予報を見て、天気を確認し、雨の予報が出ていれば、雨の降る時間帯、降水量、気温などから来客数を予測し、仕込み量を調節する。

1日中雨の日は、お店から外を見ていると寂しくなるほど人が歩いていなくて、何とも言えない気持ちになる。

そんな時、お客様が来てくれると神さまのように思える。

天気の悪い日は、お客様は便利のいいところでお買い物をするようで、ショッピングセンターに出店している委託販売店では完売することが多かった。

これが一番の対策のようだ。

3年目

夏に半月の休業後、営業を再開した。

例年と違うのは、11月頃、涼しくなってから来客数が増えるところであるが、3年目は、9月後半から来客数の増加が始まった。

新規のお客様がリピーターになるケースも増えた。

「石の上にも3年」と言われるが、3年間で認知度が高まったようだ。

商品棚

店舗での売上は右肩上がりで委託販売に出品しなくても売り切れるようになった。

お店が軌道に乗ってきた。

そして、お客様に喜んでいただき、嬉しい限りである。

自信がよみがえってきた。

突然の閉店

妻ががんになった。

早ければ3か月くらいで復帰できるそうだ。

ただし、継続的に投薬治療しながらの再開になる。

パン屋は重労働なので、復帰後、これまでの量を焼くのは難しいと思われれる。

収入が減少することを考えると、お店と生活を維持していくのは難しい。

妻は、パン屋を継続したいとの希望だったので、パン屋は閉鎖し、自宅にパン工房を作り、委託販売での営業とすることにした。

時間の取れる仕事を見つけサラリーマンで生活費を稼ぐことにした。

お客様からは、励ましの声をいただき、営業再開を約束した。

自宅改装

妻の治療は順調で、年が明けて医者からも抗がん剤治療は不要との診断を得たので、パン屋を再開を決めた。

子供が使っていた6畳をの部屋を改装してパン工房にすることにした。

電気と水道工事は、友人の電気屋へお願いした。

下水管へ手洗器と流し台の排水管接続は、床下へもぐって自分で工事した。

器具は、妻が見繕い最小の冷蔵庫、2層式流し台、オーブンなど調達した。

6畳の厨房は、かなり小さいが、機能的でいい感じで仕上がった。

保健所から営業許可が下りて準備完了した。

営業再開

常連のお客様にご挨拶し、6か月の休業を経て営業を再開した。

基本的に週2日間の営業である。

販売方法は委託販売として、午前中に自宅の厨房でパンを焼いて、包装して、お昼前には委託先に持ち込む。

販売は委託先にお任せである。

宣伝方法は、ホームページ、インスタグラム、フェースブックでを使用してメッセージをお客様に伝えている。

販売状況は、委託先のPOSシステムをネット経由でリアルタイムで見ることができる。

さすがに集客力のあるショッピングセンター。

ありがたいことに、毎回、完売している。

小さなパン屋

お店をさらに小さくして委託販売へ移行し、スリム化した。

規模を小さくするメリットは大きい。

*労働負担が減少する。
*業務が効率的になる。
*リフレッシュするなど自分の時間ができる。

ディメリットは収入が減ること。

しかし、お金に換えられない余裕のある生活ができる。

これが長くパン屋を続ける秘訣なのかもしれない。