6BM8真空管アンプ|こだわりのないブログ

6BM8真空管アンプ

2020年04月25日

はじめに

10年ほど前の記事を再掲載したものです。

真空管アンプ

以前に新聞を読んでいたら、横浜のある個人タクシーの運転者さんが車に真空管のアンプを積んでジャズを聴いているという記事があった。

お客さんにも真空管アンプの音が好評でリピーターも多いそうだ。

そういえば昔はほとんどの電気機器には真空管が使われていたが、私の育った時代は真空管からICに代わり、子供のころは道端に捨てられたテレビやラジオなどから真空管をはずして爆コンクリートの道や壁にぶつけて割って破裂音を楽しいで遊んでものだった。

だから、ほとんど真空管アンプのオーディオの音を聞いたことがないのだ。

どんな音がするのだろう?

オーディオや音楽が好きな人はみんな口をそろえて『やわらかい音でいいよ』というのでますます聞きたくなる。

大型電気店で真空管アンプを探すと数社から発売されていたがとても手の出るような値段ではない。

そこで、インターネットで『真空管アンプ』を検索すると自作の真空管アンプのホームページが多数あった。

回路は、単純なものを選びパーツリストを作成し、ネット調達だと3万円くらいで自作できそうである。

回 路

回路を1から作るのは大変なことなので、ネット上に公開されている回路図を使わせていただくことに。

一番シンプルで信頼性がありそうな『超3極管接続Ver.1 6BM8 シングル ステレオパワーアンプ 』の回路を採用。

アンプの心臓部は、6BM8という真空管で、日本ではすでに生産されていないようだ。

しかし、ロシアや東欧、中国で生産は続いているようなので入手可能である。

パーツ

回路図とにらめっこして使われているパーツをひとつずつリストアップする。

真空管アンプの部品たち

回路図は電源部と増幅部からなっており、増幅部はステレオだから部品も2倍必要になる。

ちなみに図面は片チャンネルしかない。

次にネットで取り扱い部品の多い『若松通商』から部品を調達する。

しかし、トランスがいまいちなので別の店を検索する。

回路図ではタンゴのトランスを使用していたが値段が高い。

世の中には救いの神がちゃんと存在する。

ノグチトランスオリジナルというのがあり、それも真空管用である。

安い!と驚くほどではないがこれを買わない手はない。

筐体

さて、最後に筐体の製作に使う材料であるが、アルミ板を加工して作ろうかと製図までしたが、アルミ板自体が高い。

はっきり言って出来合いの筐体を買ったほうが断然安い。

計画の変更を余儀なくされ途方にくれていたころ、Todoさんがジャンク品なら200~300円くらいで筐体が手に入る上、おまけに抵抗やコンデンサ、トランジスターなど使えそうな部品も取れるからお買い得だと教えてくれた。

そういえばそうだ。

さっそくジャンク探しに・・・

しかし電車代使って数百円のジャンクを買いにいくのもどうかと思っていたら、ちかくに『ブックオフ・ハードオフ』があることを思い出した。

店内を探すとありました。ジャンク品の山。

ジャンクでも動くものが多数あり、単に古いという理由でジャンク扱いになっていたものもあった。

値段は100円から1万円まであり、今回の場合筐体が目的なので中身はどうでもいい。

見た目のよいもので適当な見た目のよいものを探す。

真空管アンプの筐体ベース

あった!衛星放送の受信機のようだ。これを300円で買った。

筐体製作

真空管アンプの筐体製作

アンプの箱も手に入りさっそく加工。

はじめにバラス。

前面パネルはプラスチック製ではめ込み式のために比較的簡単に外れた。

次に中にある基盤をはずす。

電源コードや後ろのコネクター類は使えそうなのでとっておく。

つぎに全部ばらせたところで上部にトランス3つ乗せる穴を開ける。

はじめに四隅にドリルで穴を開けジグゾーで四角に切るのだが、予想に反しててこずってしまった上に騒音がひどい。

近所の方に迷惑にならないようにと思いながら遠慮したがたいして努力の甲斐もなく相変わらずの騒音だった。

次に真空管のコネクターを取り付ける穴を開ける。

円形なのでジグゾーでは無理。

しかたなくドリルで穴をいっぱい開け後はラジオペンチで切るというよりは引きちぎった。

雑な仕事だったが、トランスを載せれば上の写真のとおり。

前面パネル製作

真空管アンプの筐体前面パネル製作

見栄えが一番大切なフロントパネルの製作。

材質は何がいいか迷うところだが家にあるものを使うこととした。

フロントパネルになりそうな家にあるものといえば亜鉛の板金と白色のプラスチック板があった。

白色のプラスチックもなかなか研究室の手製の実験機材のようでかっこいいかもしれないと思い加工に入ったが電動工具できると熱でとけて無残な切り口となりあえなく挫折し、途方にくれていると泥だらけのステンレス版が物置の床下から見つかった。

洗えばきれいになるからこれを使うことにした。

厚さは1mmにもならないので鉄板はさみでジョキジョキ切り、パイロットランプとスイッチとボリュウムと入力切替の穴を開けた。

スイッチは四角いので鉄板はさみでジョキジョキ怪我をしてはいけないので端は後ろに折り返す。

1時間程度で終わるだろうとたかをくくっていたら半日もかかってしまった。

配 線

真空管アンプの配線

さて、いよいよ本番の配線作業です。

配線図とにらめっこをしながら半田で部品を取り付ける。

なれないので半田こてが指にあたりジューッという音とともにやけどがいくつかできてしまった。

配線が以外に難しくリード線を左手に持ち右手には半田ごて。

そして半田はどこで持てばいいのだろうか・・・。

手足口すべて使ってはんだの作業。

上の写真のようにもともとの箱の構造を尊重して配線を行った結果、ふたをあけて調整することを考慮のうえ配線をしていったところ、リード線が異様に長くなってしまった。

これはもしかしてアナログ回路では致命的な欠陥となるかもしれないと思いながらも極力短く短くしたが・・・

試行錯誤

すべて組みあがったところでもう一度図面を見ながら配線のチェック!

3回チェックし間違えないので、真空管1本を差込、電圧測定するところにテスターのプローブを取り付け震える手で電源プラグをコンセントに差込んだ。

5秒たっても煙は出ない。

OK!スッツチON!

電圧が上がっていく50V・60・70・・・

70Vに調整しなければいけないのに80Vで停止した。

10ボルトも高い。

可変抵抗器をいじっても調整の電圧が下がらない。

でも80Vは許容範囲だからまあいいか。

電源を切りしばらくして残りの真空管を取り付ける。

スイッチON!

わっ!110Vになっちゃった!

その上針が右へ左へ大きく揺れハウリングしている。

だめだ!緊急OFF!

これではいけません。

いい音で聞くため1から回路を組みなおすこと。

再配線

前回の失敗でやる気が失せ、1ヶ月以上にわたりこの残骸と化した真空管アンプは部屋の片隅へ。

夏も本格的になり外に出るのもだるいので、この真空管アンプの計画を練り直した。

配線が長くなったのは箱の構造を尊重したことにあるため、今回は箱の構造を無視し、箱の下に穴をあけることで箱を上下に開かずに電圧調整ができる構造にすることにした。

今回はサンダーで豪快に切断。

基盤も本来はラグ板を使用するようであるが手持ちがないので右と左用に分離しリード線の距離を短くした。

アースもしっかり取れるように太い銅線を使用した。

気合を入れて再配線1

部品をすべて取り外し1個ずつテスターで異常がないか検査した。

ダイオードが飛んでいた。

トランジスターはOK。

インターネットでダイオードを注文する。

送料のほうが高いのでついでにA級のボリューム2個とちょっと高そうなつまみを注文した。

もう一度、気合を入れて配線だ!

再び気合を入れて配線

完成したところで再挑戦!

配線OK!テスターOK!真空管OK!電源投入!

テスターの電圧の読みはいきなり30Vそして0Vへ。

真空管のヒーターが温まってくると10V・20V・・・とあがってくる。

そして60Vこの辺でとまれ!と思いつつ期待を裏切り100Vへ。

電源OFF。

だめだ!原因はなんだ!

図面を見つめること1時間・・・。

図面では電源の二次電圧を220Vの端子から取っているがどうもこれが怪しいようだ。

ためしに+B電圧をテスターで測ると330V以上ある。

これではだめだ。

使用しているトランスにはあと200Vと180Vの端子があるので200Vの端子に接続し再度電源投入!

50Vちょっとで安定した。

やったね!

両チャンネルともVR2で70ボルトに調整。

完璧だ!

どんな音が出るかお楽しみ・・・。

完成

真空管アンプ完成

CDプレーヤーと20数年ものの自作スピーカーを真空管アンプに接続し準備は完了した。

後は記念すべき第1曲がかかるだけである。

電源ON!しばらくして真空管のヒーターが赤くなる。

そしてCDを投入しPLAY。

静寂がながれた。

ボリュームを上げるとかすかに電源ハムの音がする。

あれ?

もう一度配線をチェックした。

どうも入力端子の半田づけがあまいようなので付け直し再度電源を入れる。

CDのPLAYボタンを押す。

再び静寂が流れた。

ボリュームを少し上げると少しずつ音が聞こえ始めた。やった!

CD1枚ぶん慣らし運転で聞いていたらだんだんいい音になってきた。

6BM8真空管

1時間2時間するうちにどんどん音がよくなってくる。

高音が伸びてきて低音が響き渡る。

一番感心したのが中音の響きだった。

うわさどおり、まろやかな音であるが、こもった音ではない。

このアンプは電子楽器の音楽にはあまり向いていないかもしれないが、昔のジャズはとてもいい音で再生していた。

恐るべし6BM8真空管アンプ。

6BM8真空管アンプ

夜は照明を落として真空管のヒーターの光を見ながら音楽を聴いてお酒を飲んでひと時をすごすのはお金では買えない贅沢だ。

オーディオ関連の記事
LPレコード洗浄
YDA138 デジタルアンプ自作キット
JBLスピーカー修理